キヤノン、低価格帯コンパクトデジカメ撤退と写真人口

2月24日の日刊工業新聞に「キヤノン、低価格コンパクトデジカメ撤退へ-高機能・一眼レフに集中」という報道がありました。カメラ機能に優れるスマートフォンの攻勢を受け販売が急減。競争激化で収益性も悪化しており、事業継続が難しいと判断した。撤退するのは2万円以下の低価格帯コンパクトデジカメ。同社のコンパクトデジカメ販売台数の2割程度を占める。今後は高機能コンパクトデジカメと、デジタル一眼レフカメラに経営資源を集中させるとしています。

一方で2月26日の日本経済新聞朝刊には、キヤノンマーケティングジャパンの社長の考えが載っています。その内容というのが、スマホの普及で写真人口が増えたため、写真を撮ることの面白さを伝えれば、市場はまだ伸びるといった内容で、日本は世界の主要市場で唯一成長し、今後はカメラからプリント製品まで製品を充実させ、市場の裾野を広げると。

確かにスマホの普及で低価格のコンパクトデジカメの撤退は悪い判断ではないと思います。オリンパス、富士フイルム、パナソニックやニコンも低価格コンパクトデジカメからの撤退を検討していると言われています。各社とも残すとしたら単焦点レンズのスマホに対抗できるズームレンズ搭載の高機能コンパクトデジカメといったところでしょうか。低価格コンパクトデジカメの撤退は時代の流れから致し方がないことかもしれません。

しかし、スマホの普及で写真人口が増えたというのはどうなんでしょう。スマホの前に携帯電話に搭載されているカメラで気軽に写真を写せるということから、そのステップアップ的な感じで5年ほど前にデジタル一眼レフの入門機が爆発的に売れたといったことがありました。でも私が聞いたところによると、そのデジタル一眼レフ入門機を買った人の中から、レンズを買い足した人やデジタル一眼レフ機を買い換えた人というのは10パーセントを下回っているそうです。そう考えるとスマホの影響で写真に興味を持った人がデジタル一眼レフ機を買うという第二波はあると思います。それでも5年ほど前に携帯電話のカメラからステップアップした人よりも今回スマホで写真に興味を持った人は少ないと思うので、市場はまだ伸びるという読みはいかがなものでしょうか?

キヤノンのEOS Kiss X7iというデジタル一眼レフ機は低価格ながらも素晴らしい入門機カメラだと思います。タッチオートフォーカスとバリアングル(自由に角度を変えたり回転させたりできる)搭載の一眼レフで、スマホ操作に慣れた人にも溶け込みやすくしていますが、実際、デジタル一眼レフ機の買い替えや、交換レンズの購入者というのは、写真愛好家をピラミッド型でいえば頂上付近のほんの一角のユーザーでしょうから、裾野を広げたとしても上述の通り90パーセントの人が入門機を買って終わりとなっていますので、その中から次にステップアップする人が出てこないと写真人口の伸びというのは厳しいような感じがしています。

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